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液化天然ガス貯蓄システム

(書誌+要約+請求の範囲)

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平5−248599
(43)【公開日】平成5年(1993)9月24日
(54)【発明の名称】液化天然ガス貯蔵システム
(51)【国際特許分類第5版】
F17C 13/00 302 A 6916-3E
【審査請求】有
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願平4−45715
(22)【出願日】平成4年(1992)3月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 富徳
【住所又は居所】大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎 (外1名)



(57)【要約】
【目的】 LNGを気化するときに発生する冷熱を有効に利用し、BOGの発生を抑制する。
【構成】 LNGを気化するときに発生する冷熱の一部を圧縮式ヒートポンプサイクル10によって回収し、この冷熱でLNGタンク1内のLNGを過冷却し、BOGの発生を抑制するシステム。圧縮式ヒートポンプサイクル10は、従来からあるランキンサイクル15から得た動力で運転するので、気化するLNGが多く、かつ電力需要の少ないとき、または24時間連続して本システムを運転する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】 液化天然ガスを貯蔵するタンクと、タンクから液化天然ガスが供給され、その後外部に送出される第1熱交換器と、タンクから液化天然ガスが供給され、その後タンクに戻される第2熱交換器と、第1熱交換器で液化天然ガスによって冷却されて液化した熱媒体を、膨張弁によって膨張して、第2熱交換器で蒸発させ液化天然ガスを冷却し、圧縮機によって圧縮し、第1熱交換器へ循環する圧縮式ヒートポンプサイクルとを含むことを特徴とする液化天然ガス貯蔵システム。
【請求項2】 第1熱交換器から液化天然ガスが供給され、その後外部に送出される第3熱交換器によって、第2熱媒体が冷却されて液化し、これをポンプによって加圧し、第4熱交換器で海水などによって加熱気化し、この高圧の熱媒体ガスによってタービンを作動させ第3熱交換器へ循環させるランキンサイクルのタービンの動力によって、前記圧縮機を駆動することを特徴とする請求項1記載の液化天然ガス貯蔵システム。

詳細な説明

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液化天然ガス(以下、「LNG」という。)の貯蔵システムに関し、特に都市ガス供給用LNGの気化時の冷熱を利用してLNGタンク内のLNGを冷却し、ボイルオフガスの発生を防ぐLNGの貯蔵システムに関する。
【0002】
【従来の技術】LNGタンクは保冷されているが、外部からの熱によって、その一部が気化して季節、時間を問わずほぼ一定のボイルオフガス(以下、「BOG」という。)が発生する。BOGの処理方法として、従来は加圧後、気化された天然ガスに混ぜて用いたり、加圧後LNGの気化の際に発生する冷熱を利用して再液化してLNGタンクに戻すなどしている。
【0003】一方、LNGを気化する際に発生する冷熱を利用して空気を液化分離し、液体窒素、液体酸素、液体アルゴンを製造したり、炭酸ガスを冷却してドライアイスを製造したり、食品などを冷却して冷凍食品を製造したり、冷熱発電をしたりしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、天然ガスを都市ガスとして利用するとき、その需要は季節、時間によって大きく変動する。特に、時間による変動に追随するように、上に述べた冷熱利用装置を稼動することは困難である。たとえば、1日の気化天然ガス送出パターンが、図5のL1で示すものであるとする。
【0005】LNGタンクに外部からの入熱によって発生するボイルオフガスは、LNGの沸点が−160℃近辺の低温であるため、気温の影響をほとんど受けず、略一定のL2で示す量発生する。また、空気液化による空気分離などは、その性質上略一定の冷熱を利用することが要求されるので、ここで利用される冷熱量はL3で示す量となる。残った冷熱は、冷熱発電装置で電気として回収するが、電気は貯えることができないので、電気の需要の少ないときは、発生する冷熱は一部しか利用されず、需要の多いときは不足する電力を買電で補わねばならない。すなわち、斜線を付した部分の冷熱は利用されず、海水を冷やすなどして無駄にされている。
【0006】一方、発生したBOGは図4に示すように圧縮機51で加圧して、送出用の気化した天然ガスと混合したり、LNGポンプ52で引出された送出用LNGと熱交換器53で熱交換し、冷却液化後、膨張弁54で常圧にし、LNGタンク50に戻している。しかし、圧縮機51を稼動する電力は、たとえば0〜5時の間は冷熱発電が少ないので、買電などに頼らねばならず、また圧縮機51は送出用ガスに混ぜる場合はたとえば70kg/cm2にまで加圧せねばならず、大型のものを要し、使用電力量も大きくなるという問題がある。一方、BOGの再液化は加圧圧力は10kg/cm2程度でよいが、送出用天然ガスとのバランスでその量が制限されるという問題がある。
【0007】本発明の目的は、上述の問題点を解決し、ガス需要の多い時間帯にLNG気化時の冷熱の一部を利用して、LNGタンク内のLNGを過冷却し、特にガス需要の少ない時間帯にBOGの発生を防ぐLNG貯蔵システムを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、液化天然ガスを貯蔵するタンクと、タンクから液化天然ガスが供給され、その後外部に送出される第1熱交換器と、タンクから液化天然ガスが供給され、その後タンクに戻される第2熱交換器と、第1熱交換器で液化天然ガスによって冷却されて液化した熱媒体を、膨張弁によって膨張して、第2熱交換器で蒸発させ液化天然ガスを冷却し、圧縮機によって圧縮し、第1熱交換器へ循環する圧縮式ヒートポンプサイクルとを含むことを特徴とする液化天然ガス貯蔵システムである。
【0009】また本発明は、第1熱交換器から液化天然ガスが供給され、その後外部に送出される第3熱交換器によって、第2熱媒体が冷却されて液化し、これをポンプによって加圧し、第4熱交換器で海水などによって加熱気化し、この高圧の熱媒体によってタービンを作動させ第3熱交換器へ循環させるランキンサイクルのタービンによって、前記圧縮機を駆動することを特徴とする。
【0010】
【作用】本発明に従えば、ガス需要の多い時間帯にLNG気化時の冷熱の一部を利用して、LNGタンク内のLNGを過冷却し、冷熱として貯え、これをガス需要の少ない時間帯のBOG発生の防止に利用し、全体として有効に冷熱を利用できる。
【0011】
【実施例】次に、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではない。
【0012】図1は、本発明の一実施例の系統図である。送出用LNGの一部は、LNGタンク1からポンプ2によって吸引加圧され、第1熱交換器5に入り、ここでその温度が−160℃から−146℃に上昇し、さらに第3熱交換器6によって温度を−50℃に上昇され気化し、気化器7で海水などによって常温にされ、熱量調整後高圧パイプラインを通じて都市ガスとして市中に供給される。第1熱交換器5では、窒素などの第1熱媒ガスが30kg/cm2の圧力で−123℃から−150℃に送出用LNGによって冷却され液化する。この第1熱媒液は膨張弁11を通ることによって圧力を8kg/cm2に低下させられ、同時に温度が−175℃に下がり第2熱交換器へ入り、ここで後述する循環LNGによって加熱気化され、−150℃になる。第1熱媒ガスは、8kg/cm2、−150℃の状態で圧縮機13に入り、−123℃、30kg/cm2の状態とされ、第1熱交換器に入るという循環の圧縮式ヒートポンプサイクル10を構成する。ポンプ3でLNGタンク1から吸引された循環LNGは、第2熱交換器で第1熱媒液を蒸発することによって、温度を−160℃から−166℃に下げられ、LNGタンク1に戻り、LNGタンク内のLNGの温度を下げる。
【0013】第3熱交換器6では、フロンR22またはプロパンなどの第2熱媒が送出用LNGによって冷却されて液化する。液化した第2熱媒液はポンプ16で加圧され、第4熱交換器17で海水などによって気化し、高圧のガスとなる。この高圧の第2熱媒ガスは、タービン18を回転し、低圧のガスとなって第3熱交換器6に入るという循環のランキンサイクル15を構成する。圧縮機13は、タービン18と動力変換装置19を介して連結されている。また、循環LNGを第2熱交換器12で冷やす必要のないときは、タービン18で得た動力は動力変換装置19を介して発電機20から電力として回収する。
【0014】ポンプ4でLNGタンク1から吸引加圧された残りの送出用LNGは、空気分離や冷熱発電などその他の用途に冷熱を用いる装置21を通って昇温され、または直接気化器7に導かれ送出される。
【0015】次に、本実施例による熱バランスを考える。条件としては、気温が高いためBOGの発生が若干多く、気化した都市ガス供給用天然ガス量の少ない夏期について考える。冬期は、BOGの発生も夏期に比して少なく、都市ガス供給用天然ガスの気化量も多く、熱バランスは夏期よりも有利になる。この時期における気化天然ガスの送出量は、7,200t/日、BOG発生量は480t/日(いずれもLNG換算)とする。また、送出プラントは1基当たり60t/hのものを気化天然ガスの送出量に見合うように、時間毎に運転基数を変えて運転する。
【0016】図2のL1は、気化天然ガスの送出パターンであり、横軸に24時間制で時刻を示し、朝6時に始まって翌朝6時に終わる。縦軸は、送出プラントの運転基数を示す。本実施例では、時刻別の送出プラントの運転基数は表1のようになり、1日の延運転時間は137時間となる。
【0017】
【表1】


【0018】このうちで、空気液化などの冷熱利用21に毎時ガス送出プラント1基分の冷熱を利用すると、それは図2のL12で示される量となり、残りの137−24=113時間分の冷熱が本プラントに使えることになる。すなわち、ガス送出プラント1基当たり処理すべきBOG量qcは、次のようになる。
【0019】
【数1】


【0020】BOGの気化潜熱は、120kcal/kgであるので、上記の量qcのBOGを液化するために必要な熱量Q(BOG)は次のようになる。
【0021】
【数2】


【0022】この熱を第2熱交換器12で循環LNGから奪うことによって、LNGタンクでBOGの発生を防げる。この場合、循環LNGの量を120t/hとし、第2熱交換器入口の温度を−160℃とすると、LNGの比熱は0.75kcal/kg℃であるので、第2熱交換器12でΔT(L2)温度が低下する。
【0023】
【数3】


【0024】すなわち、循環LNGは−166℃で第2熱交換器12から出ることになる。
【0025】次に圧縮式ヒートポンプサイクル10について、これに使う第1熱媒として窒素ガスを使用した場合を、図3に示すモリエル線図で考える。このサイクルはA点(30kg/cm2,−123℃)の窒素ガスを第1熱交換器5で送出LNGにエネルギーを与え、途中A1でその一部を液化、A2で完全に液化し、過冷却の液体窒素のB点(30kg/cm2,−150℃)にする。B点の液体窒素は膨張弁11で、ほとんど等エンタルピ的に膨張され、途中B1でその一部を気化し、C点(8kg/cm2,−175℃)にする。C点の気液混合状態の窒素は、第2熱交換器12で、循環LNGからエネルギーを受け、D点(8kg/cm2,−150℃)になる。D点は、ほぼ飽和蒸気線上にあり、完全に窒素ガスになっている。D点の窒素ガスは圧縮機13によってほぼ断熱圧縮されるので等エントロビー線に沿って、A点に至りサイクルが完成する。このサイクルによって、第1熱交換器5では、1170cal/mol、第2熱交換器12では890cal/molの熱交換をすることになる。したがって、第1熱交換器5で送出LNGから奪われる熱量Q(LNG)は次のようになる。
【0026】
【数4】


【0027】またこれによって、送出LNGはΔT(L1)だけ温度が上昇する。
【0028】
【数5】


【0029】すなわち、送出用LNGは、−145℃で第1熱交換器5から出ることになる。第1熱交換器5出口のLNGの圧力が20kg/cm2以上であれば、LNGは液体のままで第3熱交換器6へ送られる。
【0030】次に圧縮機13の必要動力AL(C)を考える。これは前記両熱交換器の熱交換量の差であるので、【0031】
【数6】


【0032】また1KW=860kcal/hであるので次のようになる。
【0033】
【数7】


【0034】次にランキンサイクル15で得られる動力のうちどれだけの動力を使えば圧縮機13が稼働できるかを考える。
【0035】図1のランキンサイクル15と略同じ構成の従来の冷熱発電プラントの実績から、ガス送出プラント1基当たり1200KWの発電が可能である。LNGの入側温度が圧縮式ヒートポンプサイクル10によって−160℃から−145℃に上昇していることを考えて、発電量が90%となるものとすれば、ガス送出プラント1基当たり、次のBOGを処理できる。
【0036】
【数8】


【0037】BOGの発生量は20t/hであるので、深夜のガス送出プラントの稼働が2基であり、そのうち1基分を空気分離などの冷熱利用装置21に利用し、第1、第2の熱交換器の熱交換率、動力変換装置19の効率等を考えても十分BOGを処理できる。
【0038】BOGの発生量(20t/h)に比例して本装置を稼動すれば、図2のL13のようになる。また、効率を考えてガス送出プラントの運転基数の多い時間帯、たとえば17時から21時の4時間に本システムを運転すれば、L14のようになる。この17時から21時の時間帯では、(L14−L13)は、図2の斜線を付した量となり、この冷熱がLNGタンク内に貯えられ、他の時間帯のBOGの発生を抑制することになる。電気の需給バランスを考え、最も効率のよい時間帯に本システムを運転することが好ましい。
【0039】またランキンサイクル15のタービン18と圧縮式ヒートポンプサイクル10の圧縮機13とは、その軸同志を直結してもよく、歯車などの変速装置を介して連結してもよく、またタービン18の動力で発電機を動かし、その発生した電力でモータを動かし、そのモータによって圧縮機13を稼働してもよい。これらを動力変換装置19として表示している。
【0040】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、LNGを気化して送出する都市ガス需要の多い時間帯にLNG気化時の冷熱の一部を有効に利用して、圧縮式ヒートポンプシステムによってタンク内のLNGを過冷却し、LNGを気化して送出するガス需要の少ない時間帯のBOG発生を防止できる。また、24時間連続して、タンク内のLNGを冷却しBOGの発生を防止できる。したがって、ガス需要の少ない時間帯にBOGを買電によって加圧し、送出するなどのBOGの処理が不要となる。

 

 

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