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渦電流探知試験方法及び渦電流探知試験装置

(書誌+要約+請求の範囲)

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平8−145954
(43)【公開日】平成8年(1996)6月7日
(54)【発明の名称】渦電流探知試験方法及び渦電流探知試験装置
(51)【国際特許分類第6版】
G01N 27/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願平6−292735
(22)【出願日】平成6年(1994)11月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号
(71)【出願人】
【識別番号】000235532
【氏名又は名称】非破壊検査株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区西天満2丁目10番2号
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 富徳
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英夫
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】薮下 秀記
【住所又は居所】大阪府大阪市北区西天満2丁目10番2号 非破壊検査株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】若田 史雄
【住所又は居所】大阪府大阪市北区西天満2丁目10番2号 非破壊検査株式会社内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修



(57)【要約】
【目的】 例え二重管仕様の伝熱管の検査にあたっても、内管に発生している減肉腐食状態を信頼性高く探知することができる渦電流探知試験方法を得る。
【構成】 プローブ本体8aと、プローブ本体8aの本体軸芯方向に沿ったコイル軸芯を備え、且つ互いにプローブ本体8aの軸方向に軸芯を揃えて設けられる一対の探知コイル11とを備えた探知プローブ8を管材内を移動させて、管材内に誘起される渦電流の変化を検出して前記管材の欠陥を検出する渦電流探知試験方法において、管材が内管3と外管4とを備えた二重管である場合に、一対の探知コイル11間の中間部位において絶縁体12で絶縁された一対のフェライトコア13を備えて、プローブ本体8aを構成するとともに、探知コイル11を流れる交流の周波数を変化させて、探知コイル11における絶対感度が小さくなる最適周波数を求め、最適周波数において内管内の欠陥を探知する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】 検査対象の管材の内径未満でほぼ同一の外径を備えたプローブ本体(8a)と、前記プローブ本体(8a)の本体軸芯方向に沿ったコイル軸芯を備え、且つ互いに前記プローブ本体(8a)の軸方向に軸芯を揃えて前記プローブ本体(8a)に配設される一対の探知コイル(11)とを備えた探知プローブ(8)を管材内を移動させて、前記管材内に誘起される渦電流の変化を検出して前記管材の欠陥を検出する渦電流探知試験方法において、前記管材が内管(3)と外管(4)とを備えた二重管である場合に、前記一対の探知コイル(11)間の中間部位において絶縁体(12)で絶縁された一対のフェライトコア(13)を備えて、前記プローブ本体(8a)を構成するとともに、前記探知コイル(11)を流れる交流の周波数を変化させて、前記探知コイル(11)における絶対感度が周波数領域で相対的に小さくなる最適周波数を求め、前記最適周波数において前記内管内の欠陥を探知する渦電流探知試験方法。
【請求項2】 検査対象の管材の内径未満でほぼ同一の外径を備えたプローブ本体(8a)と、前記プローブ本体(8a)の本体軸芯方向に沿ったコイル軸芯を備え、且つ互いに前記プローブ本体(8a)の軸方向に軸芯を揃えて前記プローブ本体(8a)に配設される一対の探知コイル(11)とを備えた探知プローブ(8)を有する渦電流探知試験装置であって、前記プローブ本体(8a)が前記一対の探知コイル(11)間の中間部位において絶縁体(12)で絶縁された一対のフェライトコア(13)を備えて構成され、前記一対のフェライトコア(13)が、前記プローブ本体(8a)の軸芯方向中央部位から前記本体軸芯方向で離間する側に延出自在に構成されている渦電流探知試験装置。

詳細な説明

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、渦電流探知試験方法及び渦電流探知試験装置に関するものであり、こういった装置を使用して、コンプレッサー、ポンプ等のモータクーラ、発電機、クーラに採用されている管材としての二重管の内管の検査をおこなう場合等に利用される技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、図1に示すような内管と外管を有する二重管の欠陥探知において、外管のノイズの影響で渦流探知試験(ET)でおこなうことは難しく、浸透探知試験(PT)、リークテスト等をおこなっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、浸透探知試験(PT)では二重管の端部近傍しか探知できず、管内部側にある欠陥を有効に探知することができない。一方、リークテストをおこなう場合は、その作業が煩雑、雑多となる。従って、渦流探知試験(ET)により欠陥の探知をおこなうことが好ましいが、二重管の内管に対する渦流探傷試験を、従来の探傷法でおこなうと、欠陥信号の位相が外管の影響をうけて、充分な解析精度が得られない。このような探傷に用いられる従来の探知プローブは、その探知コイルが空芯構成とされており、コイルのコアにベークライトやジュラコン等が採用されていた。従って、図8(イ)に示すように、探知コイルにより形成される磁場は、外管内まで分布するため、外管情報をノイズとして拾ってしまうのである。さらに、本願のような欠陥の探知においては、内管内壁側に発生する腐食減肉等が問題となるが、欠陥の位置の確認のみならず、その減肉深さまでを判別しようとすると、上記した従来の方法では、充分な信号量を確保することが難しい。さらに詳細に説明すると、空芯コイルを使用する場合は、一般に数kHzから数10kHzの探傷周波数で、被検査物の浸透深さを決定する。この場合、例えば一重管のものを対象とすると、この浸透深さ検出には、2〜3mm以上の深さの渦電流が影響するため、管の外側に支持板(バッフル)等の導電性材料が接触している場合は、それらの信号(ノイズ)を検出し、減肉等の欠陥信号があっても検出することが困難である。さらに被検査物の浸透深さが二重管仕様の内管のように厚みが1.0〜1.5mm程度の薄肉の場合は、当然ながら外管へも浸透し、外管の材質的影響を受けてしまうことも原因であると考えられる。ここで、この構成で使用される試験周波数は150KHz程度である。そこで、発明者らは、図8(ロ)に示すように探知コイルにおけるコイルの充填密度を高くしたり、複数解析曲線手法による解析を試みたが、減肉深さの解析に最大25%のばらつきが発生し、信頼性の高い解析をおこなうことができなかった。この手法では、試験周波数として20〜30KHz程度を採用した。一方、軽金属の表面に発生する亀裂探傷等の表面割れの検査用として、図8(ハ)に示すようにフェライトコアの探知プローブを使用することが提案されているが、これは亀裂の存在の確認に使用されるもので、減肉深さ等の欠陥の性状を判別することを目的としておらず、さらに、その探知コイルに供給される電流の周波数は一般に定まったもの(1〜2MHz程度を使用する)とされている。そこで、本発明の目的は、例え二重管仕様の伝熱管の検査にあたっても、その内管に発生している減肉腐食状態を信頼性高く探知することができる渦電流探知試験方法及び渦電流探知試験装置を得ることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための渦電流探知試験方法の特徴手段は、管材が内管と外管とを備えた二重管である場合に、一対の探知コイル間の中間部位において絶縁体で絶縁された一対のフェライトコアを備えて、プローブ本体を構成するとともに、探知コイルを流れる交流の周波数を変化させて、探知コイルにおける絶対感度が周波数領域で相対的に小さくなる最適周波数を求め、最適周波数において内管内の欠陥を探知することにある。さらに、上記目的を達成するための渦電流探知試験装置の特徴構成は、これが、検査対象の管材の内径未満でほぼ同一の外径を備えたプローブ本体と、プローブ本体の本体軸芯方向に沿ったコイル軸芯を備え、且つ互いにプローブ本体の軸方向に軸芯を揃えてプローブ本体に配設される一対の探知コイルとを備えた探知プローブを有するもので、前記プローブ本体が前記一対の探知コイル間の中間部位において絶縁体で絶縁された一対のフェライトコアを備えて構成され、前記一対のフェライトコアが、前記プローブ本体の軸芯方向中央部位から前記本体軸芯方向で離間する側に延出自在に構成されていることにある。
【0005】
【作用】本願の渦電流探知試験においては、探知プローブとして、フェライトコアを備えたものが使用される。そして、検査にあたっては先ず、探傷周波数を変化させて、絶対感度(言い換えれば増幅度)が低くなる最適周波数が選択される。このようにフェライトコアの探知プローブを採用する場合は、この最適周波数帯域が比較的S/N比が大きい周波数域となる(図3、図4参照)。一方、これを空芯コアの場合について説明すると、周波数を上げるに従って絶対感度(言い換えれば増幅度)は減少するが、この減少度合いが少ないとともに、S/N比もある程度までしか、得られない(図3、図4参照)。従って、本願のように、フェライトコアのもののほうが、絶対感度が低く、S/N比が高い周波数域を比較的広い帯域で確保できるため、本願においては、この周波数帯域を利用して欠陥の探知をおこなう。この最適周波数においては、実質上、探知コイルにより形成される磁場が欠陥の径方向の位置に対して適切に分布する。結果、フェライトコアを採用することにより、比較的低い周波数で渦電流密度を高く維持して、コイルによる磁界を探知対象の管内表面に集中し、外管への漏洩を極めて少なくできる。よって、従来の空芯コイル(コアが非磁性材で構成されたもの)に比べて、検出感度が4〜30倍、S/N比で2倍以上の検出性とすることができる。さらに、本願の渦電流探知試験装置においては、フェライトコアをプローブの軸方向に伸縮することにより、探知コイルにより形成される磁場を内管に存在する欠陥の径方向位置に対応したものとすることができ、検出性を向上することができる。
【0006】
【発明の効果】従って、例え二重管仕様の伝熱管の検査にあたっても、その内管に発生している減肉腐食状態を信頼性高く探知することができる渦電流探知試験方法及び渦電流探知試験装置を得ることができた。
【0007】
【実施例】本願の実施例を図面に基づいて説明する。図1には、検査対象の二重管の管板近傍部1における伝熱管の検査をおこなっている状況が示されている。この伝熱管である二重管2は銅等の材料からなる内管3とアルミ等の材料からなるフィン付の外管4から構成されている。図示する例においては、内管3の肉厚は1.2mm程度であり、外管4の肉厚もほぼ同程度で、フィン厚0.45mm以下の多数のフィンが管外周部位に設けられている。そして、検査対象の欠陥としては、この内管3の内壁部位3aに減肉深さ0.2〜0.5mm程度の腐食が発生する。本願においては、これを探知しようとする。ここで、前記二重管2は、その断面が図2に示すような構成となっており、外管4の内壁部位4aに等ピッチで幅0.2〜0.3mm程度の漏水探知溝6が備えられている。
【0008】上記が検査対象の二重管2の概要であるが、以下、本願の渦電流探知試験方法に使用される渦電流探知試験装置7の構成について説明する。この渦電流探知試験装置7は、検査対象の二重管2内に配設されて、管内を移動されながら検出をおこなう探知プローブ8と、この探知プローブ8の操作のための操作部9と、探知プローブ8からの出力信号を表示するブラウン管、ペンレコーダ等の表示部10とを備えて構成されている。そして、前記探知プローブ8に備えられる一対の探知コイル11の一方に誘導用の電流を流すとともに、内管内に渦電流を発生させ、欠陥の存在による渦電流の乱れを他方の探知コイルで探知する構成が採用されている。さて、図1に示すように、前述の探知プローブ8はプローブ本体8aと、このプローブ本体8aに備えられる探知コイル11を備えている。そして、図示するように探知プローブ8は、検査対象の管材の内径未満でほぼ同一の外径を備えたプローブ本体8aと、プローブ本体8aの本体軸芯方向に沿ったコイル軸芯を備え、且つ互いにプローブ本体8aの軸方向に軸芯を揃えてプローブ本体8aに配設される一対の探知コイル11とを備えて構成されている。そして、このプローブ本体8aは、一対の探知コイル11間の中間部位において絶縁体12で絶縁された一対のフェライトコア13を備えて構成されており、一対のフェライトコア13が、プローブ本体8aの軸芯方向中央部位から本体軸芯方向で離間する側(図における左右両端側)に延出自在に構成されている。そして、コアの方向でコア長さが調節可能であるとともに、コアの端面部位が管径方向で管内壁側に突出した構成が採用されている。後述するように、探知コイル11によって形成される磁場の管径方向への到達深さは、コイルに供給する交流の周波数制御により調節できるが、同時に本願の構造においては、前記フェライトコア13の管軸方向の延出長さを調整することにより、同様に磁場の管径方向への到達深さを調節可能である。具体的には、長さの異なった一対のフェライトコアを複数種用意しておき、これらの装着を取り替える。
【0009】実際の検査条件データについて以下に箇条書きする。
二重管2通常部内径 15mm軸芯方向の拡管部長さ 53〜191mm拡管部内径 15.2〜15.3mm拡管量 0.2〜0.3mmプローブ本体8a本体外径 14.0mm軸方向長さ 250mm探知コイル11コイル線径 0.15mmコイル巻数 50ターンコイル相対離間距離 4mm【0010】次に、本願の探知プローブ8を使用した検査方法の手順を追いながら説明するとともに、検査結果について説明する。当然、検査にあたっては、上述の渦電流探知試験装置7が使用される。検査にあたっては、検査を最も精度よくおこなうために、探知コイル8に流す交流の周波数である最適周波数を選定するとともに、フェライトコア13の最適長さを選択する予備工程と、上記最適周波数及びフェライトコア13の最適長さに設定された探知プローブ8により、従来の手法に従って検査をおこなう本検査工程とを備えることとなる。以下、工程順に説明する。
予備工程予め欠陥の位置、減肉深さが判明している二重管において、上記本願の探知プローブ8を挿入移動して、欠陥信号を得る。この場合の欠陥信号の状態を図5、図9(ハ)に示す。信号はV信号とH信号とを備えており、図上矢印に示すものが欠陥信号である。さらに、図上ABSは信号が標準比較方式による感度を示し、DIFは信号が自己比較方式であることを示している。図6に同一対象欠陥に対する従来の探知プローブ(非磁性材のコアを有する)による欠陥検出信号を示している。図5、図6を比較すると、両者間で本願に係わる図5に示すものが視認性が良好であることが判る。
【0011】上記の検出信号は、探知コイル11に付与される交流の周波数を固定した場合における出力信号であるが、下記で定義される絶対感度と交流の周波数との関係は、図3のようになる。探知プローブ8がフェライトコア13を有する場合は、この対周波数の感度曲線に極小値を取る値が存在する。これに対して従来型のプローブにおいても同様な傾向を示すが、絶対感度、S/N比ともにフェライトコアに比較して、絶対感度は高く、劣った特性を示している。
【0012】絶対感度は以下のような手順で求める。この手順を図9に基づいて説明する。
1 コイルに入力する周波数を設定する。
2 検査対象の管91に試験用の貫通孔92(1mm径)を開け、探知プローブ8を移動していく(図9(イ)に示す)。
3 オシロスコープのブラウン管に表示されるVH 、VL の合成値が2Vになるように、増幅器の感度調整つまみを増減する(図9(ロ)に示す)。
4 感度調整つまみの指示値(dB)を読みとる。これを絶対感度と表現する。
5 1に戻り、コイルの入力周波数を変えて、2〜4の操作を繰り返す。従って、この絶対感度は、一定信号レベルを得るために必要な増幅度である。さらに、管の内、外面に存在する減肉状態と位相との関係を図9(ハ)に示した。
【0013】一方、外管信号をノイズ(N)とし、内管3に存する欠陥信号を有効信号(S)とするS/N比を同様に記載すると図4に示すようになる。従って、探知の目的には、この感度が低く、S/N比が高いことが好ましいが、この状況は、図3に示す最適周波数で実現する。従って、本願においては、この最適周波数(ここで、50〜450kHz程度が比較的小さい絶対感度を示す帯域であり、S/N比を考慮すると図上300kHz程度が好ましい)を予め見出しておき、検査をおこなうのである。さて、上記の過程で最適周波数を選定するとともに、本願独特の構成であるフェライトコア13の管軸方向の長さを同様に調節することにより、この長さに関しても感度が最も低い位置を見つけだしておき、この条件を満足した状態で検査をおこなった。
【0014】本検査工程前記最適周波数及び前記最適フェライトコア長さの条件下に、従来と同様の手法により渦電流探傷試験をおこなった。検査条件を整理して記載する。
最適周波数 300kHz(この周波数は、図3に示す周波数帯域において絶対感度が相対的に小さい周波数であるとともに、図3、図4から判明するように、絶対感度とS/N比との差が最も大きな周波数であり、結果的に検出精度を非常に高いものとできる周波数である。)
最適フェライトコア長さ(片側) 2 mm本願プローブと従来プローブとの検出精度の比較結果を表1に示した。表1には、検証に使用した8種の欠陥の欠陥面積(mm×mm)、実測深さ(減肉割合%)、及び本願プローブと従来型のプローブとに於ける減肉量の推定深さ割合及びその誤差を示した。ただし、欠陥面積、欠陥深さ推定に関しては、探知信号より以下のように従来方法で、推定した。
【0015】以下、この手法について説明する。一対の探知コイル間で、前後のコイルで比較しながらコイル近傍に腐食等の欠陥があれば、検出回路に備えられるホイッストンブリッジのバランスが崩れ、図9(ロ)に示すような8の字形の信号波形がCRTに描かれる。この波形は、腐食等の減肉体積に応じて、その振幅が変化し、また、減肉深さが異なると、信号位相が変化し貫通時の位相信号を境にして内外面の欠陥が扇形に別れる。従って、管の渦流探傷試験では、実機と同材質・同形状の対比試験片に貫通孔及び深さの異なる減肉欠陥を加工したものを用意し、これらを予め探傷してその時の信号位相と欠陥深さとの評価グラフを作成しておく、そして、実機探傷時に欠陥の信号、位相から、欠陥の位置及び深さを推定する。
【0016】
【表1】


【0017】表1において、横傍線で示すものは、検出できなかったものを示す。さらに、減肉割合と本願のフェライトコアプローブによる減肉深さの推定値との関係を図7に示した。結果、本願の方法においては、従来法では探知できなかった、欠陥No.2、6、7、8のものをも探知、推定できるとともに、さらに図7に示すように、±10%の範囲内の推定を、確率を92.7%という高率で得ることができた。ここで、最大評価誤差は+11.7%であった。一方、このような検査を従来型のプローブでおこなうと誤差範囲は25%程度となって実用に耐えるものではない。
【0018】〔別実施例〕上記の実施例においては、フェライトコアを軸芯方向に延出自在としたが、この方向に於ける長さの異なったフェライトコアを備えた複数の探知プローブを準備しておき、上記予備検査にあたって、これら複数の探知プローブ間で、絶対感度が相対的に小さくなるものを求めて、この探知プローブを使用できるようにしておいてもよい。尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。

詳細な説明

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、渦電流探知試験方法及び渦電流探知試験装置に関するものであり、こういった装置を使用して、コンプレッサー、ポンプ等のモータクーラ、発電機、クーラに採用されている管材としての二重管の内管の検査をおこなう場合等に利用される技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、図1に示すような内管と外管を有する二重管の欠陥探知において、外管のノイズの影響で渦流探知試験(ET)でおこなうことは難しく、浸透探知試験(PT)、リークテスト等をおこなっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、浸透探知試験(PT)では二重管の端部近傍しか探知できず、管内部側にある欠陥を有効に探知することができない。一方、リークテストをおこなう場合は、その作業が煩雑、雑多となる。従って、渦流探知試験(ET)により欠陥の探知をおこなうことが好ましいが、二重管の内管に対する渦流探傷試験を、従来の探傷法でおこなうと、欠陥信号の位相が外管の影響をうけて、充分な解析精度が得られない。このような探傷に用いられる従来の探知プローブは、その探知コイルが空芯構成とされており、コイルのコアにベークライトやジュラコン等が採用されていた。従って、図8(イ)に示すように、探知コイルにより形成される磁場は、外管内まで分布するため、外管情報をノイズとして拾ってしまうのである。さらに、本願のような欠陥の探知においては、内管内壁側に発生する腐食減肉等が問題となるが、欠陥の位置の確認のみならず、その減肉深さまでを判別しようとすると、上記した従来の方法では、充分な信号量を確保することが難しい。さらに詳細に説明すると、空芯コイルを使用する場合は、一般に数kHzから数10kHzの探傷周波数で、被検査物の浸透深さを決定する。この場合、例えば一重管のものを対象とすると、この浸透深さ検出には、2〜3mm以上の深さの渦電流が影響するため、管の外側に支持板(バッフル)等の導電性材料が接触している場合は、それらの信号(ノイズ)を検出し、減肉等の欠陥信号があっても検出することが困難である。さらに被検査物の浸透深さが二重管仕様の内管のように厚みが1.0〜1.5mm程度の薄肉の場合は、当然ながら外管へも浸透し、外管の材質的影響を受けてしまうことも原因であると考えられる。ここで、この構成で使用される試験周波数は150KHz程度である。そこで、発明者らは、図8(ロ)に示すように探知コイルにおけるコイルの充填密度を高くしたり、複数解析曲線手法による解析を試みたが、減肉深さの解析に最大25%のばらつきが発生し、信頼性の高い解析をおこなうことができなかった。この手法では、試験周波数として20〜30KHz程度を採用した。一方、軽金属の表面に発生する亀裂探傷等の表面割れの検査用として、図8(ハ)に示すようにフェライトコアの探知プローブを使用することが提案されているが、これは亀裂の存在の確認に使用されるもので、減肉深さ等の欠陥の性状を判別することを目的としておらず、さらに、その探知コイルに供給される電流の周波数は一般に定まったもの(1〜2MHz程度を使用する)とされている。そこで、本発明の目的は、例え二重管仕様の伝熱管の検査にあたっても、その内管に発生している減肉腐食状態を信頼性高く探知することができる渦電流探知試験方法及び渦電流探知試験装置を得ることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための渦電流探知試験方法の特徴手段は、管材が内管と外管とを備えた二重管である場合に、一対の探知コイル間の中間部位において絶縁体で絶縁された一対のフェライトコアを備えて、プローブ本体を構成するとともに、探知コイルを流れる交流の周波数を変化させて、探知コイルにおける絶対感度が周波数領域で相対的に小さくなる最適周波数を求め、最適周波数において内管内の欠陥を探知することにある。さらに、上記目的を達成するための渦電流探知試験装置の特徴構成は、これが、検査対象の管材の内径未満でほぼ同一の外径を備えたプローブ本体と、プローブ本体の本体軸芯方向に沿ったコイル軸芯を備え、且つ互いにプローブ本体の軸方向に軸芯を揃えてプローブ本体に配設される一対の探知コイルとを備えた探知プローブを有するもので、前記プローブ本体が前記一対の探知コイル間の中間部位において絶縁体で絶縁された一対のフェライトコアを備えて構成され、前記一対のフェライトコアが、前記プローブ本体の軸芯方向中央部位から前記本体軸芯方向で離間する側に延出自在に構成されていることにある。
【0005】
【作用】本願の渦電流探知試験においては、探知プローブとして、フェライトコアを備えたものが使用される。そして、検査にあたっては先ず、探傷周波数を変化させて、絶対感度(言い換えれば増幅度)が低くなる最適周波数が選択される。このようにフェライトコアの探知プローブを採用する場合は、この最適周波数帯域が比較的S/N比が大きい周波数域となる(図3、図4参照)。一方、これを空芯コアの場合について説明すると、周波数を上げるに従って絶対感度(言い換えれば増幅度)は減少するが、この減少度合いが少ないとともに、S/N比もある程度までしか、得られない(図3、図4参照)。従って、本願のように、フェライトコアのもののほうが、絶対感度が低く、S/N比が高い周波数域を比較的広い帯域で確保できるため、本願においては、この周波数帯域を利用して欠陥の探知をおこなう。この最適周波数においては、実質上、探知コイルにより形成される磁場が欠陥の径方向の位置に対して適切に分布する。結果、フェライトコアを採用することにより、比較的低い周波数で渦電流密度を高く維持して、コイルによる磁界を探知対象の管内表面に集中し、外管への漏洩を極めて少なくできる。よって、従来の空芯コイル(コアが非磁性材で構成されたもの)に比べて、検出感度が4〜30倍、S/N比で2倍以上の検出性とすることができる。さらに、本願の渦電流探知試験装置においては、フェライトコアをプローブの軸方向に伸縮することにより、探知コイルにより形成される磁場を内管に存在する欠陥の径方向位置に対応したものとすることができ、検出性を向上することができる。
【0006】
【発明の効果】従って、例え二重管仕様の伝熱管の検査にあたっても、その内管に発生している減肉腐食状態を信頼性高く探知することができる渦電流探知試験方法及び渦電流探知試験装置を得ることができた。
【0007】
【実施例】本願の実施例を図面に基づいて説明する。図1には、検査対象の二重管の管板近傍部1における伝熱管の検査をおこなっている状況が示されている。この伝熱管である二重管2は銅等の材料からなる内管3とアルミ等の材料からなるフィン付の外管4から構成されている。図示する例においては、内管3の肉厚は1.2mm程度であり、外管4の肉厚もほぼ同程度で、フィン厚0.45mm以下の多数のフィンが管外周部位に設けられている。そして、検査対象の欠陥としては、この内管3の内壁部位3aに減肉深さ0.2〜0.5mm程度の腐食が発生する。本願においては、これを探知しようとする。ここで、前記二重管2は、その断面が図2に示すような構成となっており、外管4の内壁部位4aに等ピッチで幅0.2〜0.3mm程度の漏水探知溝6が備えられている。
【0008】上記が検査対象の二重管2の概要であるが、以下、本願の渦電流探知試験方法に使用される渦電流探知試験装置7の構成について説明する。この渦電流探知試験装置7は、検査対象の二重管2内に配設されて、管内を移動されながら検出をおこなう探知プローブ8と、この探知プローブ8の操作のための操作部9と、探知プローブ8からの出力信号を表示するブラウン管、ペンレコーダ等の表示部10とを備えて構成されている。そして、前記探知プローブ8に備えられる一対の探知コイル11の一方に誘導用の電流を流すとともに、内管内に渦電流を発生させ、欠陥の存在による渦電流の乱れを他方の探知コイルで探知する構成が採用されている。さて、図1に示すように、前述の探知プローブ8はプローブ本体8aと、このプローブ本体8aに備えられる探知コイル11を備えている。そして、図示するように探知プローブ8は、検査対象の管材の内径未満でほぼ同一の外径を備えたプローブ本体8aと、プローブ本体8aの本体軸芯方向に沿ったコイル軸芯を備え、且つ互いにプローブ本体8aの軸方向に軸芯を揃えてプローブ本体8aに配設される一対の探知コイル11とを備えて構成されている。そして、このプローブ本体8aは、一対の探知コイル11間の中間部位において絶縁体12で絶縁された一対のフェライトコア13を備えて構成されており、一対のフェライトコア13が、プローブ本体8aの軸芯方向中央部位から本体軸芯方向で離間する側(図における左右両端側)に延出自在に構成されている。そして、コアの方向でコア長さが調節可能であるとともに、コアの端面部位が管径方向で管内壁側に突出した構成が採用されている。後述するように、探知コイル11によって形成される磁場の管径方向への到達深さは、コイルに供給する交流の周波数制御により調節できるが、同時に本願の構造においては、前記フェライトコア13の管軸方向の延出長さを調整することにより、同様に磁場の管径方向への到達深さを調節可能である。具体的には、長さの異なった一対のフェライトコアを複数種用意しておき、これらの装着を取り替える。
【0009】実際の検査条件データについて以下に箇条書きする。
二重管2通常部内径 15mm軸芯方向の拡管部長さ 53〜191mm拡管部内径 15.2〜15.3mm拡管量 0.2〜0.3mmプローブ本体8a本体外径 14.0mm軸方向長さ 250mm探知コイル11コイル線径 0.15mmコイル巻数 50ターンコイル相対離間距離 4mm【0010】次に、本願の探知プローブ8を使用した検査方法の手順を追いながら説明するとともに、検査結果について説明する。当然、検査にあたっては、上述の渦電流探知試験装置7が使用される。検査にあたっては、検査を最も精度よくおこなうために、探知コイル8に流す交流の周波数である最適周波数を選定するとともに、フェライトコア13の最適長さを選択する予備工程と、上記最適周波数及びフェライトコア13の最適長さに設定された探知プローブ8により、従来の手法に従って検査をおこなう本検査工程とを備えることとなる。以下、工程順に説明する。
予備工程予め欠陥の位置、減肉深さが判明している二重管において、上記本願の探知プローブ8を挿入移動して、欠陥信号を得る。この場合の欠陥信号の状態を図5、図9(ハ)に示す。信号はV信号とH信号とを備えており、図上矢印に示すものが欠陥信号である。さらに、図上ABSは信号が標準比較方式による感度を示し、DIFは信号が自己比較方式であることを示している。図6に同一対象欠陥に対する従来の探知プローブ(非磁性材のコアを有する)による欠陥検出信号を示している。図5、図6を比較すると、両者間で本願に係わる図5に示すものが視認性が良好であることが判る。
【0011】上記の検出信号は、探知コイル11に付与される交流の周波数を固定した場合における出力信号であるが、下記で定義される絶対感度と交流の周波数との関係は、図3のようになる。探知プローブ8がフェライトコア13を有する場合は、この対周波数の感度曲線に極小値を取る値が存在する。これに対して従来型のプローブにおいても同様な傾向を示すが、絶対感度、S/N比ともにフェライトコアに比較して、絶対感度は高く、劣った特性を示している。
【0012】絶対感度は以下のような手順で求める。この手順を図9に基づいて説明する。
1 コイルに入力する周波数を設定する。
2 検査対象の管91に試験用の貫通孔92(1mm径)を開け、探知プローブ8を移動していく(図9(イ)に示す)。
3 オシロスコープのブラウン管に表示されるVH 、VL の合成値が2Vになるように、増幅器の感度調整つまみを増減する(図9(ロ)に示す)。
4 感度調整つまみの指示値(dB)を読みとる。これを絶対感度と表現する。
5 1に戻り、コイルの入力周波数を変えて、2〜4の操作を繰り返す。従って、この絶対感度は、一定信号レベルを得るために必要な増幅度である。さらに、管の内、外面に存在する減肉状態と位相との関係を図9(ハ)に示した。
【0013】一方、外管信号をノイズ(N)とし、内管3に存する欠陥信号を有効信号(S)とするS/N比を同様に記載すると図4に示すようになる。従って、探知の目的には、この感度が低く、S/N比が高いことが好ましいが、この状況は、図3に示す最適周波数で実現する。従って、本願においては、この最適周波数(ここで、50〜450kHz程度が比較的小さい絶対感度を示す帯域であり、S/N比を考慮すると図上300kHz程度が好ましい)を予め見出しておき、検査をおこなうのである。さて、上記の過程で最適周波数を選定するとともに、本願独特の構成であるフェライトコア13の管軸方向の長さを同様に調節することにより、この長さに関しても感度が最も低い位置を見つけだしておき、この条件を満足した状態で検査をおこなった。
【0014】本検査工程前記最適周波数及び前記最適フェライトコア長さの条件下に、従来と同様の手法により渦電流探傷試験をおこなった。検査条件を整理して記載する。
最適周波数 300kHz(この周波数は、図3に示す周波数帯域において絶対感度が相対的に小さい周波数であるとともに、図3、図4から判明するように、絶対感度とS/N比との差が最も大きな周波数であり、結果的に検出精度を非常に高いものとできる周波数である。)
最適フェライトコア長さ(片側) 2 mm本願プローブと従来プローブとの検出精度の比較結果を表1に示した。表1には、検証に使用した8種の欠陥の欠陥面積(mm×mm)、実測深さ(減肉割合%)、及び本願プローブと従来型のプローブとに於ける減肉量の推定深さ割合及びその誤差を示した。ただし、欠陥面積、欠陥深さ推定に関しては、探知信号より以下のように従来方法で、推定した。
【0015】以下、この手法について説明する。一対の探知コイル間で、前後のコイルで比較しながらコイル近傍に腐食等の欠陥があれば、検出回路に備えられるホイッストンブリッジのバランスが崩れ、図9(ロ)に示すような8の字形の信号波形がCRTに描かれる。この波形は、腐食等の減肉体積に応じて、その振幅が変化し、また、減肉深さが異なると、信号位相が変化し貫通時の位相信号を境にして内外面の欠陥が扇形に別れる。従って、管の渦流探傷試験では、実機と同材質・同形状の対比試験片に貫通孔及び深さの異なる減肉欠陥を加工したものを用意し、これらを予め探傷してその時の信号位相と欠陥深さとの評価グラフを作成しておく、そして、実機探傷時に欠陥の信号、位相から、欠陥の位置及び深さを推定する。
【0016】
【表1】


【0017】表1において、横傍線で示すものは、検出できなかったものを示す。さらに、減肉割合と本願のフェライトコアプローブによる減肉深さの推定値との関係を図7に示した。結果、本願の方法においては、従来法では探知できなかった、欠陥No.2、6、7、8のものをも探知、推定できるとともに、さらに図7に示すように、±10%の範囲内の推定を、確率を92.7%という高率で得ることができた。ここで、最大評価誤差は+11.7%であった。一方、このような検査を従来型のプローブでおこなうと誤差範囲は25%程度となって実用に耐えるものではない。
【0018】〔別実施例〕上記の実施例においては、フェライトコアを軸芯方向に延出自在としたが、この方向に於ける長さの異なったフェライトコアを備えた複数の探知プローブを準備しておき、上記予備検査にあたって、これら複数の探知プローブ間で、絶対感度が相対的に小さくなるものを求めて、この探知プローブを使用できるようにしておいてもよい。尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。

 

 

 

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