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有機溶剤の回収方法

(書誌+要約+請求の範囲)

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平10−7721
(43)【公開日】平成10年(1998)1月13日
(54)【発明の名称】有機溶剤の回収方法
(51)【国際特許分類第6版】
C08F 6/12 MFK
B01D 5/00
C08J 3/12 101
【FI】
C08F 6/12 MFK
B01D 5/00 E 9344-4D
C08J 3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願平8−166366
(22)【出願日】平成8年(1996)6月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号
(71)【出願人】
【識別番号】591158324
【氏名又は名称】株式会社リキッドガス
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区瓦町四丁目2番14号
(72)【発明者】
【氏名】小西 由高
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】小原 一男
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】粟田 秀則
【住所又は居所】大阪府大阪市西区京町堀1丁目4番22号 株式会社リキッドガス内
(72)【発明者】
【氏名】鶴谷 毅
【住所又は居所】大阪府大阪市西区京町堀1丁目4番22号 株式会社リキッドガス内
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 富徳
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎



(57)【要約】
【課題】 有機溶剤中で重合された合成樹脂粉末から、合成樹脂粉末の軟化溶融温度以下で、有機溶剤を効率よく除去し、かつ有機溶剤を回収する方法を提供する。
【解決手段】 有機溶剤中の合成樹脂粉末をスプレー式熱風乾燥装置1で、合成樹脂粉末の軟化溶融温度以下で1次乾燥して大部分の有機溶剤を除去し、次に真空乾燥装置21で、合成樹脂粉末の軟化溶融温度以下で2次乾燥し、有機溶剤をほぼ完全に除去する。またスプレー式熱風乾燥装置1および真空乾燥装置21の排気は液化ガスを用いた冷却器で冷却し、有機溶剤を凝縮回収する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】 モノマーを有機溶剤中で重合させ、溶剤を分離して合成樹脂粉末を製造する方法において、有機溶剤中の合成樹脂粉末を、合成樹脂の溶融温度以下の熱風を用いるスプレー式熱風乾燥装置で、循環ガスを冷却して溶剤を回収しつつ1次乾燥し、1次乾燥された合成樹脂粉末を真空乾燥装置で液化ガスで冷却して溶剤を回収しつつ2次乾燥することを特徴とする有機溶剤の回収方法。
【請求項2】 1次乾燥における循環ガスの冷却に液化ガスの気化熱を用い、液化ガスの気化したガスを循環ガスに混合して用いることを特徴とする請求項1記載の有機溶剤の回収方法。
【請求項3】 1次乾燥における循環ガスが窒素を主体とするガスであり、前記液化ガスが液体窒素であることを特徴とする請求項2記載の有機溶剤の回収方法。

詳細な説明

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機溶剤中で重合された合成樹脂粉末から有機溶剤を分離回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】有機溶剤中で重合された合成樹脂粉末から有機溶剤を除去するために、従来は蒸発缶で脱溶剤する方法が用いられている。溶剤の沸点にもよるが、蒸発缶による脱溶剤は、合成樹脂粉末の溶融温度以上で行わないと効率的に脱溶剤が行えず、この場合一部の溶融固化した樹脂を冷却後微粉砕する必要があり、また樹脂品質が加熱重合で劣化するという問題がある。さらに溶剤含有量が2〜5%程度までは蒸発缶で比較的簡単に脱溶剤できるが、それ以上脱溶剤は長時間を要し、困難である。
【0003】一方従来の蒸発缶では、有機溶剤を含んだ排気がそのまま大気中に放出され環境に悪影響を与えるという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、有機溶剤中で重合された合成樹脂粉末から低温で効率的に有機溶剤を除去し、かつ有機溶剤を回収する方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、モノマーを有機溶剤中で重合させ、溶剤を分離して合成樹脂粉末を製造する方法において、有機溶剤中の合成樹脂粉末を、合成樹脂の溶融温度以下の熱風を用いるスプレー式熱風乾燥装置で、循環ガスを冷却して溶剤を回収しつつ1次乾燥し、1次乾燥された合成樹脂粉末を真空乾燥装置で液化ガスで冷却して溶剤を回収しつつ2次乾燥することを特徴とする有機溶剤の回収方法である。本発明に従えば、有機溶剤中の合成樹脂粉末は、1次乾燥と2次乾燥との2段階乾燥によって乾燥される。1次乾燥は、スラリーポンプなどで加圧され、スプレー式熱風乾燥機に噴霧供給され、合成樹脂の溶融温度以下で、できるだけ高い温度の熱風によって瞬間的に95〜98%程度の有機溶剤が蒸発除去される。2次乾燥は、高真空度の真空乾燥機内で、溶融温度以下で2次乾燥される。これによって合成樹脂粉末に含有される有機溶剤は、1%程度以下にまで除去される。また熱風乾燥機および真空乾燥機の排気は、有機溶剤を含んでいるので、液体空気、液化天然ガス、液体窒素などの液化ガスで冷却することによって有機溶剤を回収する。前記1次乾燥では、熱風温度を合成樹脂の溶融温度以下で、できるだけ高い温度、すなわち溶融温度近くに設定すれば、熱風の循環量等の条件が同じであれば、乾燥時間を充分短くできる。また2次乾燥では、真空度を高くすることによって、溶融温度以下の乾燥温度で乾燥時間を短くすることができる。
【0006】また本発明は、1次乾燥における循環ガスの冷却に液化ガスの気化熱を用い、液化ガスの気化したガスを循環ガスに混合して用いることを特徴とする。本発明に従えば、1次乾燥の循環ガスの冷却に、液化ガスの気化熱が用いられ、前記の気化ガスが循環ガスに混合され、その補給に用いられるので、循環ガスが充分に冷却され、かつ循環中の損失が充分に補われる。
【0007】また本発明は、1次乾燥における循環ガスが窒素を主体とするガスであり、前記液化ガスが液体窒素であることを特徴とする。本発明に従えば、循環ガスが窒素ガスを主体とするガスであるので、乾燥された有機溶剤と混ざっても爆発することがなく安全であり、液化ガスとしても入手し易い。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を一実施の形態によって、より具体的に説明する。
【0009】図1は、スプレー式熱風乾燥装置1の系統図である。キシレン系溶剤中で重合されたアクリル系樹脂粉末が、原液タンク2中に貯蔵され、アクリル系樹脂粉末が沈澱しないように撹拌機3で撹拌されている。前記原料液は、たとえばアクリル系樹脂粉末40%を含む。前記原料液は、原料ポンプ4によって加圧され、アトマイザ5を介して乾燥槽6中に噴霧、すなわちスプレーされる。乾燥槽6には、送風機7で加圧された窒素ガスが加熱器8で、アクリル系樹脂粉末の溶融温度70℃以下のたとえば65℃に加熱されて供給される。乾燥槽6では、瞬間的にアクリル系樹脂粉末は乾燥され、窒素気流によってサイクロン分級機9に送られ、大部分のアクリル系樹脂粉末は、窒素気流と分けられる。窒素気流は、さらにバグフィルタ10によって濾過され、アクリル系樹脂粉末は、ほぼ完全に窒素気流と分けられる。乾燥槽6、サイクロン分級機9、およびバグフィルタ10で分離されたアクリル系樹脂1次乾燥品は、各下部にあるコーン部に留まり、それらの下部にあるバルブ11から外部に取出される。バグフィルタ10を出たキシレン系溶剤を含んだ窒素気流は、冷却器13で液体窒素によって冷却され、凝縮したキシレン系溶剤は、トラップ14を介して溶剤タンク15に回収され、窒素ガスは、循環管路16を通って送風機7に吸引されて循環される。冷却器13では、窒素気流の冷却のため液体窒素の一部が気化し、気化した窒素ガスは循環管路16で循環窒素ガスと混合される。バルブ11でアクリル系樹脂を取出すときおよびトラップでキシレン系溶剤を回収するときに窒素ガスが放出されるが、放出された窒素ガス分は、冷却器13で気化した窒素ガスで補給される。バルブ11から取出されたアクリル系樹脂1次乾燥品に含有される溶剤は1.5〜5%であり、樹脂の溶融はなかった。
【0010】図2は、本発明の2次乾燥に用いる真空乾燥装置21の一例を示す系統図である。本装置21は、耐圧容器22で構成され、液体窒素による冷却装置35と有機溶剤トラップ36とを介して真空ポンプ37でその内部が、たとえば10-3torrに減圧されている。耐圧容器23には、1次乾燥されたアクリル系樹脂粉末が供給管24から供給される。内部のアクリル系樹脂粉末は、熱電対温度計26によって温度が監視されている。容器23の周囲には、電熱ジャケット28が設けられ、容器23に取付けられたモータ25によって撹拌機38を回転させながら、たとえばアクリル系樹脂粉末の温度が50±2℃となるように制御されている。2次乾燥を終わったアクリル系樹脂粉末は、モータ25を止めて排出管27を介して、バルブ29を開けることによって製品タンク31に入れられる。
【0011】スプレー式熱風乾燥装置1で、たとえば含有溶剤1.7%に1次乾燥されたアクリル系樹脂粉末は、真空乾燥装置21で50℃、6時間 真空度10-3torrで2次乾燥して、含有溶剤0.8%のアクリル樹脂粉末を得た。
【0012】図3は、本発明の2次乾燥に用いる真空乾燥装置41の他の例を示す系統図である。本装置41では、耐圧容器42に1次乾燥されたアクリル系樹脂粉末が供給管43から供給される。耐圧容器42中のアクリル系樹脂粉末は、モータ44で回転される撹拌機45で撹拌される。本装置41では、減圧下のガスが、循環ポンプ48によって、耐圧容器42、液体窒素冷却器46、有機溶剤トラップ47、循環ガス予熱器49と循環されている。そして耐圧容器42の周囲には伝熱ジャケット50が設けられ、熱電対温度計51によって、耐圧容器42内がたとえば50±2℃に温度が制御される。本装置41における2次乾燥は、真空ポンプ52によって循環系内を減圧して行うが、乾燥の進行とともに循環系内の真空度を上げることが必要である。2次乾燥されたアクリル樹脂粉末は排出管52からバルブ53を介して製品タンク54に入れられる。
【0013】比較例キシレン系溶剤中に分散したアクリル系樹脂粉末をトレイ式の真空乾燥装置を用い80℃、1.5時間、10-3torrの真空度で1次乾燥した。この乾燥品は一部が溶融固着しており、粉砕機で微粉砕し、含有溶剤量を測定したところ4%であった。この粉体を同じ真空乾燥機で80℃、6.5時間、真空度10-3torrで2次乾燥したが、粉体が溶融し、表面積が低下するため含有溶剤量は1.8%以下にならなかった。
【0014】
【発明の効果】本発明によれば、合成樹脂粉末の加熱温度を軟化温度以下として合成樹脂粉末を軟化溶融することなく、熱風乾燥機で循環ガスを冷却して溶剤を回収しつつ1次乾燥を行うもので大部分の溶剤を乾燥分離できる。
【0015】また、僅かに残った溶剤は、合成樹脂粉末の加熱温度を軟化温度以下として、比較的短時間でこれもまた軟化溶融することなく、真空乾燥機で2次乾燥されるので、ほとんど完全に溶剤が分離除去できる。
【0016】さらに、熱風乾燥機の循環ガスは、液化ガス(たとえば、液化窒素ガス)によって冷却されるので有機溶剤はほぼ完全に回収され、大気に放出されることがないので環境問題が生じない。
【0017】また本発明によれば、熱風乾燥機において液化ガスの気化ガスを循環ガスに混合して用い、この循環ガスを液化ガスで冷却するので、有機溶剤の大気への放出が一層少なくなり、また循環ガスの補給用に冷却用液化ガスの気化ガスが有効に用いられるので、冷却用液化ガスの気化ガスの有効利用の面でも効果的である。

 

 

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